「遊ぶ前にやることやらなきゃだろ」
「それはそう、なんだけど……」
あたしが不満気に唇を尖らせると、冬哉は頬杖をついてため息を吐く。
赤点未遂のあたしに、冬哉が勉強を教えてくれている理由は、うちのママが冬哉にお願いしたから。
言わば、こうして勉強に付き合わされている冬哉は被害者とも言えるわけで……。
「ごめんね……面倒だったら放っておいてくれてもいいよ?」
「放っておいて、ひとりで出来んの?」
「が、頑張れば……」
「って、言ってる先から間違ってるし」
「うそっ、どこ?」
「こことここ」
「え、二箇所も!?」
「えーん」と嘆きながら、ゴシゴシと消しゴムをかける。
すると、「ここはただ計算が違うだけ。あとここは……」と、冬哉は丁寧に説明を始めてくれた。
口は悪いけど、いつだって優しい冬哉。
他の女の子に勉強を教えているとこなんて見たことないし、想像も出来ないけど、もし冬哉が全ての女の子にこうならば、確実に今以上にモテている。
もしかしたら、あたしに見向きもしてくれなくなるかも……。
そう思ったら、少し怖くなって。
「冬哉」
「なに?」
「あの……えと、頑張るね」
冬哉の優しさに甘えてばかりじゃいられない。



