冷徹王子様は、あたしだけに甘い恋をする。


──と、意気込んだのはいいものの。



「もぉ、こういう日に限っていないんだから……。ただいまぁー」

冬哉への愚痴を何気なしに漏らしながら、あたしは家のドアを開けた。


はるかの想いを知って、早速放課後に冬哉の元へと向かったまではいいものの、冬哉は既に教室にはいなかった。

朝は一緒に登校するけど、帰りはお互い友達と遊んだりするから、特に約束はしていない。

だからいなくても、冬哉を責めることは出来ないんだけども……。


すっかりはるかのことを話す気でいたのに、出鼻をくじかれ肩を落としながら、リビングのドアを開けた。

すると、


「あ、今ちょうど帰ってきたわ! うん、うん、じゃあ今から行くね!」


電話で誰かと話していたママは、帰宅したあたしを見るなりそう言って、電話を切った。そして、


「おかえり! 今から美奈さんのとこ行くわよ」

「へっ?」


帰ってきたばかりのあたしの腕を掴んで、再び玄関へと引きずり戻した。