冷徹王子様は、あたしだけに甘い恋をする。


「話って、そんだけ?」

「えっ……」


冬哉の問いかけに、ピタッと固まる女子達。


顔を見なくても、声だけで分かる冬哉の“不機嫌”。


「それだけっていうか、山下さんが秋吉くんと一緒にいたから、わたし達は忠告に……」

「余計なお世話なんだけど」


間髪入れず、ピシャリと言い放つ冬哉。


「他の男と一緒にいただけで騒ぎ立てるほど、小さくないんだけど」

「で、でも、秋吉くんは山下さんの友達の彼氏だよっ!?」

「だったら何だよ。むしろ逆に用があったって考える方が普通じゃね?」

「でもっ」

「あー、うざ。あんたらの言うことより、夏海の方を信じるから」


「もう早く失せてくれる?」と、睨んで続ける冬哉。

すると、女子達はまだ何か言いたそうにしながらも踵を返し、あたしは咄嗟に隠れた。


「全然優しくなんかなってないじゃん!」


吐き捨てるように呟き、パタパタと横を走っていく女子達。


良かった、気付かれなかったみたい……。


遠ざかっていく姿に、あたしはホッと胸を撫で下ろした。