「はるかはきっと、冬哉のことなんて全然見てないよ。はるかが見てるのは、秋吉くんだけだと思う。……ね、はるか」
あたしが名前を呼び、後ろを振り返ると建物の影からはるかが出てきて。
「えっ」
秋山くんは、分かりやすく目を丸くして、驚いた。
「護くんがそんなこと考えてるなんて、全然思わなかった」
ポツリと呟いて、こっちに歩いてくるはるか。
「私から告白したのに、橘くんと比べてカッコよくないとか、どうしてそんなこと言うの?」
秋吉くんの目の前で足を止め、頬をぷっくりと膨らませ問いかけるはるかは、少し怒っている様子。
でも、そんなはるかに顔を赤くしている秋吉くんの姿を見て、あたしは小さく笑った。
秋吉くんの気持ちを理解出来るからこそ、ふたりはもう大丈夫だと確信する。
お邪魔虫になっちゃわないように、あたしはふたりを残してその場を後にした。
あたしも同じ、ほんの少し前まで秋吉くんと一緒だった。
『彼女』として冬哉の隣に立つことが、とても不安だった。
自分が傷付くのもそうだけど、あたしのせいで冬哉が悪く言われたりしたら……。
そう想像すると、自分の気持ちを冬哉に素直に伝えることが出来なかった。
だけど──。



