冷徹王子様は、あたしだけに甘い恋をする。


「とりあえず、あたし一人で話してくるね」

「大丈夫?」


心配そうに訊ねるはるかに「うん」と頷いて、あたしは隠れていた場所から出た。


「秋吉くん」

「え、山下さん?」


部屋の鍵を閉めているところに声をかけると、振り返った秋吉くんは驚いた顔をした。


「あれ、はるかは?ひとり?」

「うん、秋吉くんにちょっと聞きたいことがあって……」

「聞きたいこと?」


更に不思議そうに首を傾げる秋吉くんに、あたしは深呼吸するように小さく息を吐く。


はるかも聞いてる。
だから、ちゃんとハッキリさせないと……。


「あのね、あたしか冬哉が何か秋吉くんの気に障ることしちゃったかな……って思って」

「え?」

「さっきもだけど、何となく避けられたような気がして、もしあたし達が何かしちゃったなら、ちゃんと謝りたいなと思って」

「……」


うわ、なに馬鹿正直に一気に話しているんだろう。

キョトンとする秋吉くんを前に、見当違いなことを言ってしまったんじゃないかと、恥ずかしさで顔を赤くする。


だけど、見当違いではなかったみたい。


「はははっ」と声に出して、秋吉くんは少し困ったような表情で笑った。