冷徹王子様は、あたしだけに甘い恋をする。




「教室には……いないみたいだね」


あれから急いでお弁当を食べて、あたし達は秋吉くんのクラスへと向かった。

誰かに声をかけることなく、開けられっぱなしの引き戸から中を覗くと、そこには秋吉くんの姿はなかった。


ついでに言うと、冬哉もいないみたい。


冬哉の場合、学食にでも行ったのかな……なんて頭の隅で思いながら、今気にするべきは冬哉のことじゃなくて。


「部活の用事って言ってたから、もしかしたら外にいるのかも」


秋吉くんはテニス部。

はるかの言葉に、あたし達は外に出てみることにした。




7月に入って、季節はもう夏。

一歩外に出ると、突き刺すような日差しの強さに目が眩む。


「練習はさすがにしてないと思うから、部室の方かな?」


多分こっちの方だよね……と、お互い部活に入ってないあたし達は、探り探り歩いていく。

すると、


「あっ……!」


更衣室なのか部室なのか分からないけど、連なる建物の一室からちょうど出てきた秋吉くん。

思わず声を上げてしまったあたし達は、咄嗟に建物の隅に隠れた。