「せーのっ「「「「橘くーんっ!!」」」」
耳をつんざくような女子達の黄色い声。
向けられた先は、グラウンドでサッカーボールを追いかける冬哉。
今日の体育は、グラウンドで男子はサッカー、女子はテニスの授業。
だんだん暑さも厳しくなってきて、外で運動なんて億劫になる頃だけど、別クラスの冬哉の姿が見られる貴重な時間だから、うちの女子達は体育を楽しみにしている。
「こらっ!あなた達ちゃんと集中しなさい!」
女子の体育教師が怒った声を張り上げると、「はーい」と仕方なさそうに返事して、女子達はラケットを振り出した。
「相変わらず凄いねー」
「そうだね……」
苦笑しながら言うはるかに、あたしも苦笑しながら返事する。
前から冬哉はモテモテで人気があったけれど、最近一層人気が増した気がする。
それは……。
ふと何気なく冬哉の方に目を向けた瞬間、ちょうど冬哉もこっちを見て目が合った。
そして──。
「「「「きゃーっ!!」」」」
フッと冬哉が微笑むと、さっきよりも遥かに高音な女子達の声が響き渡った。