──その次の瞬間だった。
「ね、夏海ちゃん……って、どうしたの?」
ノックなしに突然ガチャリと部屋に入ってきたのは、冬哉ママ。
気配を感じたその瞬間、あたしは冬哉を突き飛ばし、ベッドから立ち上がった……ものだから、何となく不自然な体制になってしまっていた。
「うっ、ううん!何でもない! それより冬哉ママ、どうしたの?」
あたしは心臓をバクバクさせながら、話を逸らすように冬哉ママに話かける。
「あ、うん、夏海ちゃんが昨日言ってた本を貸してもらおうかと思って……」
「それなら持ってきたよ!今すぐ降りるね!」
「ありがとう。ほら、冬哉も早く起きて準備して。夏海ちゃん待ってくれてるんだから」
あたしが突き飛ばしたせいで再びベッドに横になっている冬哉。
冬哉ママを追うように部屋を出ようとしたあたしは、振り返って「バカ」と口パクで伝えた後、あっかんべをした。