「イルカのショーなら、もう終わったみたいだよ」
「えー、ショック」
あたし達が歩いてきた方から、聞こえてきた人の声。
「冬哉、人がっ……」
いつまでも抱き合っているわけにはいかない。
さすがに離れなきゃと、冬哉の胸を軽く叩くと、腕の力はスッと抜けて解放された。
「え……」
「なに?」
「う、ううん……」
正直、こんなにあっさり離してくれるとは思わなかったから拍子抜け。
というか、あたしの方が名残惜しい気がしていたりして……なんて、何を考えているんだろう。
自分の中の邪な気持ちを振り払うように、あたしはぶんぶんと首を振ると、
「冬哉、もう一回トンネル水槽に──」
トンネル水槽に戻ろうと、誘おうとした瞬間だった。
再び掴まれた腕。
顔を上げた瞬間、冬哉の顔が近づいてきて──フワッと優しく塞がれた唇。
柔らかな感触に驚いて目を見開くと、目の前には冬哉の顔があった。