冷徹王子様は、あたしだけに甘い恋をする。



久しぶりに来た水族館は、ライトアップされた大きな水槽を泳ぐ魚達の姿が幻想的で、とても綺麗。

だけど、どうしても集中して見ることなんて出来なかった。

せっかく冬哉が水族館に連れてきてくれたのに、さっきから気になるのは人の目で……。


それはまるで海の中にいるような、トンネル水槽をゆっくり歩いている時だった。


「見て、あの人めっちゃカッコいい」


どこからかまた聞こえてきた声。


「ちょっと近くいってみる?あ、でも彼女いるじゃん」


あからさまにガッカリした声にビクッとして、あたしは咄嗟に冬哉の手を振り解いた。


「夏海?」

「あ、見てあそこ!サメみたいなのがいる!」


なんて、誤魔化すように指差してみるけど、冬哉を騙すのは無理だった。


「何かあった?」

「え、別に何もないけど……」

「ウソつくなよ。さっきからずっと変じゃん」

「そんなこと……」

「あるだろ。楽しくない?」


畳みかけるように言う冬哉は、少し怒っているようにも見える。