冷徹王子様は、あたしだけに甘い恋をする。




「すみません、彼女と一緒なんで失礼します」


冬哉はあたしの肩をグイッと抱くと、先輩達に向かって言い放った。


「え……」


彼女……?

あたしが冬哉の言葉を噛み砕く前に、「行くぞ」とそのまま、先輩達がいる方とは逆に歩き出す。


「え、今、彼女って言わなかった……?」

「言った……言ったよね…… えっ!?」


背中の方でそんな先輩達の動揺する声が聞こえてくるけど、それよりもっと動揺しているのはあたしの方。


だって、彼女……って。

『彼女』って、そういう意味でいいの……?


冬哉の言葉に嬉しくなったと同時に、急に人の目が怖くなる。

手を繋いで、冬哉の隣に立つことで、浴びる注目。

この場で誰もそんなこと言っていないのに、『あの子が彼女?』『何であの子が?』という声が聞こえる気がする。

ううん、あたし達の姿が見えなくなって、先輩達が実際に言ってるかもしれない。


こんなことを気にしたって仕方がない、けど──。