「あー、お腹すいた〜!」
体育の授業が終わって着替えを済ませたあたしは、はるかと一緒に教室へと向かいながら声を上げた。
4限目が体育だと、急いで教室に戻らなくていいから楽なんだけど、ものすごくお腹が空くんだよね。
今日のお弁当何が入ってるんだろー……なんて考えながら、
「今日天気良いし、中庭で食べない? なんか甘いの飲みたいし」
あたしははるかにそう提案した。
中庭なら自販機もすぐ近くにあるし、ちょうどいい。
「うん、でも早く行かないとベンチ埋まっちゃうんじゃない?」
「そうだね」
もう教室の前まで来ていて、あたし達は少し急ぎ足で中に入ろうとした。
と、そこに──。
「夏海」
聴き慣れた低音ボイスに振り返ると、そこにいたのは冬哉。
あたし達の姿に、周りの女子達から何かヒソヒソと聞こえるけど……まぁ、気にしない。
「どうしたの?」
「数学の教科書貸して」
「は? わざわざ持って帰ってたの?」
「昨日担任に、持って帰るように言われたんだよ」
かったるそうに説明する冬哉に、あたしは仕方ないなとため息をついて、「ちょっと待ってて」と、教室へと入った。



