「ふっ、あははっ」
「……マジないんだけど」
イルカショーが終わって、堪えきれず吹き出したあたしの目の前には、びしょ濡れになったTシャツに顔をしかめる冬哉。
どうしてこんな姿になってしまったかとうと、ショーの途中で観客席の中から冬哉が選ばれたから。
……と言っても、もちろん冬哉が進んで立候補したわけじゃない。
元々は冬哉の隣の、お父さんの膝に乗っていた小さな女の子が手を挙げて選ばれたんだけど、流れるように冬哉も選ばれてしまったというわけ。
どうして冬哉が……というのは、ハート型になった飼育員さんの目を見たら分かる。
実際、「じゃあ大人の方は……そこのイケメンくんで!」と、呼ばれていたし。
それから、子どもたちが飼育員さんに教えてもらったのは、イルカがくるくる回ったり、手を振ったりする可愛いものだったけど、冬哉が教えてもらった指示は、イルカが高くジャンプして、水しぶきをかけられる……というものだった。
「貴重な体験が出来て良かったじゃん」
ショルダーバッグからハンカチを取り出しながら言うと、「うっせ」と短い返事。
とりあえず髪を拭いてあげようと手を伸ばすけど、拭きづらくて「ちょっとかがんで」とお願いした。



