冷徹王子様は、あたしだけに甘い恋をする。


「あ、えっと……SNSはしてない、かな」


年下相手に敬語は使わなくていいのかなとか、色々考えてあたしは辿々しく返事する。

すると、「もったいなーい!」と口を揃えて女の子達が声を上げた。


勿体ないと言えば確かにそうかも。

街に出ればスカウトに会わない日はないんじゃないかってくらい、その手の人達に声をかけられていて。

SNSでバズったり、芸能界に入ったりすることも、きっとそれほど難しくはないんだろうなと思う。

でも、きっと冬哉は興味なんてないんだろう。

それに……。


「見える?」

「あっ、うん!」


振り返って聞いてきた冬哉にコクンと頷く。

すると、女の子達から黄色い声が上がって、冬哉は軽く頭を下げた後、すぐに前を向いた。


こうして遊びに出るだけで注目を浴びるのに、芸能活動みたいなことを始めたらどうなるんだろう。

冬哉がこれ以上女の子達の目に晒されるのは、嫌だな……って思った。

でも──。


きゃいきゃいと騒ぐ女の子達を横に、あたしの耳からさっき言われた言葉が離れない。

一列前に座った冬哉の頭をボーッと見つめていると、イルカショーが始まった。