冷徹王子様は、あたしだけに甘い恋をする。


「いや、でもっ……」


席を空けてくれた目的は、そうじゃない。

ほら、女の子たちも複雑そうな顔をしてるし!


──なんてハッキリ言うことなんて出来なくて、アワアワしていると、

 
「良かったらこっちもどうぞ」


女の子たちの前に座っていたおじさんが、連れていた小さな女の子を膝の上に乗せて、一人分の席を開けてくれた。

……と、なると。


「俺、こっちに座るから」

「あ、うん……」


おじさんの隣に冬哉、女の子の隣にあたし……となるわけで。


「すみません……」


あたしは色んな意味で謝りつつ、空けてもらった席に腰を下ろした。


うう……。

ガッカリされているのは明白で、肩身の狭さから何となく縮こまる。すると、


「彼氏さん、めちゃくちゃカッコいいですね。SNSとかしてますか?」

「ちょっと何聞いてんの!?」

「だってフォローしたいじゃん!」


隣の女の子達がワイワイと話しかけてきた。