冷徹王子様は、あたしだけに甘い恋をする。


「あと10分くらいでイルカのショーが始まるみたいだけど……って、大丈夫か?」

「えっ、っ……!!」


顔を上げると冬哉の顔。

そして、繋いでない方の手のひらを額に当てられ、びっくりして目を見開く。


「ボーッとしてるから熱でもあるのかと思ったけど……ないか」

「っ、あるわけないでしょ!」


心配してくれているのに、この言い方は可愛くない。そう分かっているけど急に触れられたことに驚いて。


「イルカ観に行こ!」


慌てたあたしが先に行こうとすると、「ふーん」と何か言いたげに口角を上げる冬哉。

そして、グイッと手を引き返すと、


「耳まで真っ赤にして、照れてんの?」

「っ!?」


耳元で囁くように言って、してやったりとばかりの顔で見る冬哉。

これはさっきの仕返しだって、説明されなくても分かる……けど、意外と子どもっぽい冬哉のそのイタズラな表情に、あたしはムッとしながら更に顔を赤くした。