「えっ、なんで前売り券なんか買ってんの? ていうか、お金!お金払うよ!」
「なに急に改まってんだよ。いつも奢りじゃなくても奢られてんだろ」
「あでっ!」
ペシッとデコピンを喰らって、あたしは一歩後ろによろける。
奢りじゃなくても奢られてる……って。
「ジュース一本とかの額じゃないじゃん」
あたしはおでこを抑えながら不満気に言うけど、「ほら行くぞ」と冬哉は手のひらを差し出してきて、あたしの手を取った。
前売り券まで買って、一体いつから予定してたんだろう。
水族館に行きたいとか、行こうなんて今まで一度も言ったことなかったのに、知らない間に用意してくれてたことにびっくりする。
いつの間に、こんなにスマートにエスコートしてくれるようになったのか……。
それに昔は家族みんなで来ていたのに、今回はふたりきり。
しかも手を繋いで……子どもの頃とは確実に違う関係に、こそばゆくも嬉しくなる。
でも……。



