冷徹王子様は、あたしだけに甘い恋をする。


ストンッと肩に何かが落ちてきた感触。

隣を見ればそれは冬哉の頭で、小さく寝息さえ立てている。


「なんで寝てんの……」


小さく呟いた声は、冬哉には届かない。


ふたりで出掛けるのは、別に珍しいことじゃないけど。

繋がれた手に緊張して、ドキドキしているのはあたしだけ……?


視線を落として改めて見てみれば、繋いだ冬哉の手のひらは、子どもの頃とは比べ物にならないくらい大きくなっていて。

あたしの肩を借りて寝る冬哉からは、ほのかに甘い良い匂いがする。

寝顔も……女のあたしが嫉妬しちゃうくらい、とても綺麗だし。

今まで意識せずにいられたのが不思議なくらい、まるで魔法が解けたみたいにドキドキする。


電車の窓から入る陽の光に透ける冬哉の髪。

宝石みたいに綺麗で、そっと手を伸ばした瞬間──パチっと冬哉の目が開いた。