「でも、橘くんの彼女になる女の子って、すごく幸せだと思うんだよね。 だって、自分だけに優しくしてくれるってことでしょ?」
はるかは冬哉を見ながら、夢見がちな表情で言うと、
「なっちゃんは本当に何とも思ってないの?」
「え?」
「橘くんのこと」
急にこっちを向いて言われた言葉にキョトンとする……けど、あたしはすぐに深くため息をついた。
「だからー、あたしと冬哉はそういうのじゃないんだって」
『実は付き合っているんじゃないか』とか、ものすごく噂されたり質問されたりするけれど、あたし達の間に恋愛感情はない。
「なんていうか……きょうだいみたいなものだよ。物心ついた頃からずっと一緒なんだし」
「ふーん……」
あたしの返事に、はるかは何だか納得のいってないような顔をする。そして、
「なっちゃんはそうかもしれないけど……」
と、何かを言わんとしたけれど、
「次、三浦ー」
「あっ、はいっ!」
先生に呼ばれたはるかは、「行ってくるね」と残して走っていった。
そして──。



