冷徹王子様は、あたしだけに甘い恋をする。



しっかりと握られた手のひら。

手を『繋いでいる』というより『引っ張られている』感じが、何だかとても懐かしい。


まだ小さな子どもの頃、いつもこうして冬哉が手を引いて遊んでくれていた。

あたしは人見知りが激しくて、恥ずかしがり屋で、いつも冬哉の背中に隠れていた。


それが……いつからだっけ。

小学生になって、少しずつ自分の友達が増えていってからかな。


冬哉の後ろに隠れなくても大丈夫になって。

冬哉と手を繋ぐことも、自然となくなっていた。


じゃあ今、冬哉があたしの手を握っている意味は……。


「ねっ、ねぇ、どこ行くの?」


考えたら恥ずかしくなってきて、あたしは誤魔化すように冬哉に声をかける。すると、


「まだ内緒。とりあえず、腹減ったから駅で適当にメシ食うかな。何食べたい?」

「え、あ……駅なら美味しいパンケーキ屋さんがあるよ!」

「は?それ、メシじゃねーだろ」


「却下」とひと言返されて、「じゃあ聞かないでよ!」とあたしはむくれた。