冷徹王子様は、あたしだけに甘い恋をする。



冬哉に出掛けると言われ、よく分からないまま迎えた翌日、土曜日。


とりあえず荷物を持ち帰ったり、使わせてもらった部屋を片付けたりしていると「まだ?」と冬哉に声をかけられ、あたしは急いで準備して家を出た。

すると、


「遅い」


家の前で待ってくれていた冬哉は、見るからに少し不機嫌。


「今日空けとけって言っただろ。何モタモタしてんの」

「ご、ごめん。でも、ママが帰ってきて片付けとかしなきゃだったし……」


なんて言い訳も半分は本当だけど、半分は……自信がなかったんだもん。


急に出掛けるなんて言うから、それがどういう意味なのか分からなくて。

浮かれて準備しておいて、思っていた意味と違ったら恥ずかしすぎる。


だから片付けとかしながら、冬哉の様子を伺っていた……んだけど。


「はぁ」と、大きくため息をつく冬哉。

本気で怒らせてしまったかと、少しビクビクしながら冬哉を見上げると、


「行くぞ」


冬哉はあたしの手を取って、歩き出した。