目の前には野菜をたっぷり使った無水カレー。

冬哉ママのカレーは鍋に分けてもらうほど、昔から大好き……な、はずなのに、今日はどれだけ口に運んでも味が分からない。

それは……。


「あー、やっぱり美奈さんのカレーは絶品ねぇ」


頬に手を当て、満面の笑みでカレーを食べるのは、うちのママ。

パパのところから帰ってくるのは日曜日の予定だったのに、突然2日も早く帰ってきた。

何でも明日、ママに外せない仕事の商談が入ってしまったらしい。それから……。


「そう言ってもらえると嬉しい。でも、無事に手術が終わって本当に良かった」


穏やかに微笑む冬哉ママの言葉通り、パパの経過が順調だからこそママは早く帰ってきた。

それはつまり、とても良いこと……なんだけど。


「うん、それで夏海に早く会いたくて帰ってきたんのに、残念ながらあまり嬉しそうじゃないのよねー」

「えっ」

「あれかな、冬哉くんと離れるのが寂しいのかな?」

「なっ……!?」


何も知らないママは、いつものようにからかう。