問いかけておきながら、本当はどうでもいい。

どうして冬哉が優しいのかなんて、聞いたところでしょうがないって分かってる。


きっと、たぶん、理屈じゃない。

あたしの中で溢れそうになるこの気持ちと、きっと同じ。

だから──。


あたしは差し出された教科書じゃなく、それを持つ冬哉の手首をぎゅっと握った。


「はるかから、全部聞いた。あたし鈍くて、冬哉を傷つけることばっかして、ほんとごめん」


声だけじゃなく、視界も涙で歪む。

でも、ちゃんと最後まで頑張れと心の奥で自分にエールを送る。


「冬哉とはるかが仲良くなってて、本当はすごく嫌だった。バカだから、冬哉が他の女の子と付き合いそうになって、やっと気付いたの。あたしっ……」


あたしも冬哉のこと、ただの幼なじみだなんて思ってない。


──そう言おうとしたのに、言葉が続かない。


『どうして』と、自分自身に戸惑った時だった。