「ただ走っただけなのに、あんなに騒ぐのもどうかと思うよねぇ……」
冬哉は隣のクラスで、普段の授業は別だけど、体育の時だけ一緒。
うちのクラス、それから隣のクラスと、冬哉の姿にきゃあきゃあと騒ぐ女子達を横目に呟くと、
「そんなこと言えるの、なっちゃんだけだよ」
はるかが苦笑しながら返事した。
「すごいよね、なっちゃん。あの橘くんと普通に話せるんだもん」
「えー……何もすごいことないよ。ていうか何度も言うけど、昔は普通に女子とも話してたんだよ?」
それこそ子どもの頃は、転んで泣いている見知らぬ女の子を慰めてあげるほど、紳士的で優しい男の子だった。
それがいつの間にやら、とんでもない女嫌いになっちゃってたんだけど。
再び冬哉の方を見てみれば、女の子の声援を無視しながら、あからさまに嫌な顔をしている。
それでも、女の子達の黄色い声は鳴り止まない。
冷徹王子……だけども、そこがクールでカッコイイとかって、冬哉の人気は劣ることを知らない。



