「ごめん、待った?」
「遅いぞ栄子ー」

 私は冬馬を見つけると、息を切らしながら側に行って謝罪する。冬馬はハァ、と溜め息をつきながら小言を口にする。
 ……遅れたのは冬馬の方なのに、何で私が謝ってるんだろう?
 胸にモヤモヤしたものを抱えるが、それを無視して話し掛ける。

「それじゃあ、一緒に桜を見ようよ」
「え? 栄子1人で桜を見てたんだろ? なら、もう充分だろう」