桜が見えた私に笑みが浮かび、ハヤテさんが再び歩き始める。どんどん近付いていく桜に私は胸を躍らせていた。
 辿り着いた場所は杉の森にポッカリと穴が空いたように草原が広がっていた。その中央には樹齢が何百年もありそうな、桜の大樹が佇んでいた。まるで森が桜を守るかのように囲んでいて、ここに辿り着けるのが私達が通った獣道しかないようだ。
 桜は大人2、3人が手を繋いでようやく届きそうな太さの幹に、そこから伸びる枝からハヤテさんがいた桜と同じ……。いや、それ以上美しさを持った桜が咲いていた。