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次に来るときには水を持って来ようと思っていたのに、咲たちの前でそれも叶わなかった。


あたしは美緒の前に膝をついて、その顔を確認した。


可愛かった美緒の顔は暴行により歪んだまま、血の気を失っていた。


けれど目だけはしっかりと開いていて、時折眼球も動かしている。


「最近、あたしたち以外に廃墟に来てる人がいないみたいだね」


願い事を言う前に、あたしは咲へ向けてそう言った。


「あぁ。入らないように脅しておいたから」


咲はなんでもない様子で答えた。


どうやらここに出入りしていたのは咲の知り合いだったようだ。


廃墟に入ることをとめられるから、ここを選んだのだとわかった。


「そっか」


あたしは小さな声で言って、再び視線を美緒へ移した。


美緒は今どこを見ているんだろう。


どうかあたしを見てほしい。


しかし、その気持ちは伝わらず、灰色の目はうつろなままだった。


「なんでもいいから、願い事をしな」


咲に背中をつつかれて、あたしはうなづいた。


あたしの願いはたったひとつだけ。


これが叶えば、もう絶対様の力だって必要がないと言えることだった。