あたしは咄嗟に視線をそらして、なにも言わずに自分の席へ向かう。


「大崎くんが彼女と別れたって本当!?」


あたしの存在なんて見えていないかのように、3人は再び会話を続け始めた。


しかし、あたしは咲の言葉に一瞬動きを止めていた。


大崎くんが別れた?


そんなのただの偶然だ。


そう思いながらも、昨日の出来事を思い出さずにはいられなかった。


どんな願いでもかなえてくれる絶対様。


それを作り出した咲の願いは、大崎くんの彼女になることだった。


大崎くんには彼女がいたから、咲の願いを聞き届けるためには別れさせる必要がある。


その段階にきたと、取れなくもなかった。


「でもどうして急に? すごく仲がよかったよね?」


光は不思議そうに首をかしげている。


「そんなの、あたしが絶対様にお願いしたからに決まってるじゃん!」


他に生徒がいないことをいいことに、咲は大きな声で言う。


あたしはその言葉にビクリと体をはねさせた。


心臓が早鐘を打ち始めるが、悟られないようにカバンから教科書類を取り出していく。


「本当に、あんたの友達いい働きしてくれるよね」


咲がそんな風に声をかけてきたけれど、あたしは口を引き結んで返事をしなかったのだった。


それからは信じられないことの連続だった。


次々と生徒たちが教室へ入ってくる時間になったとき、大崎くんも登校してきた。


大崎くんは真っ直ぐと咲の前に向かったかと思うと次の瞬間には「好きです、付き合ってください!」と、頭を下げていたのだ。