「えっ?」


(は、恥ずかしい!私、声に出してた!)



「はは!それなら俺は王子様ってこと?僕のシンデレラ…」



そう言って、蓮はひまりの手をとって、
椅子に座らせた。


「これもこっそり買っちゃった♪」


それは、さっきのハイヒールだった。


私には必要ないと思った。


だって
この仕事が終わったら、また一人の質素な生活に戻るんだ。



「素敵な靴は、持ち主を素敵な所に連れて行ってくれるって、よく言うでしょ。」


でも
今はこの瞬間を
楽しんでいいのかもしれない。


蓮兄の肩を借りて、そのハイヒールに足を通す。

姿勢がシャンとして、まるで見える景色が変わったような気持ちになった。


「ありがとう。蓮兄。」

「こちらこそありがとう。」