「ねぇ…」


思わず声をかけたのは興味だけじゃなくて、

その子が少し
道路に身を乗り出したように見えたからだ。


こんな目の前で死なれても気分が悪い。



「…もしかして、死にたいの?」


一瞬はっとした彼女は
少し睨むように振り返った。


(杏奈…?!)


一気にアルコールが冷めるような感覚におちいった。

車のライトに照らされると、
その子は杏奈よりも少し幼く
化粧っけもなく、あどけなく見えた。


(ちがう…)


「別に…死にたいわけじゃない。」


顔は似てるけど、杏奈とは正反対のタイプに見えた。

影があって、淋しくて、無気力な…。


なんとなく自分に似てる気がした。

 
俺を拒むように車の流れに
視線を戻す。

その横顔は
暗闇ではますます杏奈の面影を感じさせた。


彼女が気になって、思わずその場から動けなくなってしまった。