「なんなの?今更。」


涙を浮かべて
手を振りはらうのは愛おしいキミ。


「もう無理に決まってるじゃない…」


その涙さえ
今も俺の心をはげしく揺さぶる。


「あんなやつのとこ…行くなよ。」

「もうムリだよ…。」


思わず引き寄せたその身体は
想像していたよりも細くて
強く抱きしめたら折れてしまいそうだった。


「杏奈…。」

「…はなして。」


トンと両手で押し返されて、
腕からするりと彼女は抜け出した。


頬の涙をぐいっとぬぐうと
俺を見上げた。


睨みつけるような別れを告げるような
強い眼差し。


この手を掴まなければ、
彼女が離れてしまうのに、身体が動かない。


「私行かなくちゃ。有…、さよなら。蓮兄にごめんねって伝えてね…」


そう言って、にこりと微笑んだ。