有の冷たい指先がまぶたをなぞる。


まつ毛にマスカラを塗られている感覚、
目元にアイラインがひかれ、ひやっと冷たさを感じた。


少しして有の動きが止まったので、
ゆっくりまぶたを開いた。


目の前にいた有と目があって
私のうるさい心臓が一段と跳ね上がった。


有は少し驚いたような表情で私を見ると
そのまま指先をのばし、私の頬に触れた。


「杏奈…」


その目には切なさや悲しみなど、たくさんの感情が見えた。


「有…?」


有は我に返ったかのように頭を軽く振ると
初めて会った日のような笑みを浮かべた。


「…に似てるな!!こうやって同じメイクすると。俺、天才だな。」


有は杏奈さんのメイクをよく知っているのかな…


もしかしたら杏奈さんにもこんな風にやっていたのかもしれない。



『…好きな人に似てるんだよね。』


私は初めて会った時、有が言っていたことをふと思い出した。