「乗って。家まで一緒に帰ろう。」


運転席から降りて来た有が、
私が持っていた段ボールを持ち上げるとドアを開けた。

(…帰ろう。)


子供の時以来、言われたことのない言葉だった。


「うん…。」


誰も待っていない家に
一人で帰るのに慣れてしまっている私の胸を揺らした。


そんな私の表情を見て、有は小さく笑みを浮かべた。


「一緒に帰ろう。」


有には、なんだか心を
見透かされている気がする。


不思議だ。

この瞳に見つめられると
私達は似ている気さえしてくる。


こんな恵まれていそうな人と私なんかが
同じわけないのに。