「刑事…」


その状況に一瞬ひるんだように見えたが、
その大きな瞳をしっかり開いて、俺を見上げた。


「私を連れて行ってもらえませんか…晴人は関係ないんです。」


この女は組が追っているのが、晴人ではないことは分かっているようだ。


川口組の事務所から、何かを持ち出したってところか。 


帳簿…

大方、外には出したくない情報。


いわゆる裏帳簿ってやつだろう。



「川口組に忍び込んで、何をしてるんだ?」

「知りたい事が…あるんです。」


もし、それがあの交通事故のことだとしたら…。


「吉沢杏奈…」


ビク。


俺の言葉に驚いたように俺を見上げ、眉間に皺を寄せる。


「なんで…」



…身代わり。

じゃない。




むしろ本当の吉沢杏奈はこっちか…。