杏奈。



一瞬見間違いだと思った。



ドクン


ドクン



だけど
俺が杏奈を見間違えるわけがなかった。


俺の脚は、ライブ中だってことも
忘れて駆け出していた。


すぐに隣に立っていた男と逃げるように消えたキミは
やっぱり杏奈だったんだな。


なんで…こんなところに来たんだ。


未練があるって
ことだろ?


顔をあげると、ひまが苦しそうに俺を見つめる。


お前は俺の気持ちをいつも見透かしているようだ。


ひま…

お前は本当に何も知らなかったのか?