「え?杏奈を?」


家に戻って、今日あったことを蓮兄に報告した。


「違うかもしれないんだけど…。」


名刺に目を落とすと
蓮兄がそのまま私を抱きしめた。


「うん。わかったよ。ありがとう。」


蓮兄の穏やかな抱擁。

純大に抱きしめられた時とは違う。


ドキドキするのではなく、心が落ち着いていくような感覚。



ママやパパに抱きしめられた時のような
あたたかい気持ちになる。


「でも、今はいい…。今はひまりが無事に帰ってきたことが嬉しいんだ。後のことは、また考えよう。」


蓮兄…

その優しい言葉に胸が締め付けられた。



私、そんな優しくされる資格ないよ。


このことを言おうか迷ってしまったのに…。



杏奈さんという存在に怯えている

とってもとっても嫌な女なのに…。


ごめんね…。