「あの!ちょっと待って下さい!」


刑事さんは少し驚いたような表情で振り返った。


「えっと…どうかされましたか?」


何を言おうとしたのだろう。

まとまらないまま、飛び出てきてしまった。


「あ、いや。」


結局何も言葉が思い浮かばなかった。


「忘れておりましたが、何か困りごとがあれば、ご連絡ください。」


刑事さんは名刺を私に差し出し、綺麗に一礼すると踵を返した。


「…ありがとうございます。」


その名刺には『捜査一課強行犯係 小池祥太郎』と書かれていた。