ひまり!




彼女が床に倒れていくのがスローモーションのように見えた。




ひまり!



手を伸ばしても届く距離じゃない。


くそっ


もどかしさが更に脚をもつれさせた。



カラン


金属音とともに折りたたみナイフのようなものが床に転がった。



床に赤い鮮血がポタポタと垂れる。



「杏奈!」


一歩先に蓮兄がひまりを抱きかかえた。


その横で見知らぬ女が座り込んで震えている。

あっという間に警備員達に囲まれて、どこかへ連れて行かれた。


誰?


状況が飲み込めなくて
息が詰まる。


この血は…ひまりなの血なのか?



蓮兄は意識の失ったひまりを抱きしめたまま、声をあげる。


まさか

ドクン


そんな…