「ごめんね、木村君…僕…僕…」

「分かったから泣くなよ…」


飛び込んできた有ともみ合いになり、
すぐに負かされて、及川さんは泣き始めた。


「及川さん、有のことが好きだったんですね。」

「そうさ、ずっと好きだった。なのにいつも君がいてさ…」


及川さんは泣きじゃくりながら、さっき捻り上げたひまりの腕をさすった。


「君と仲良くなれば、
木村君ともお近づきになれるんじゃないかと思って…。」

「なんだよ…最初から言えよ。俺は杏奈のこと狙ってるもんだと…。」


自分に好意を持っていると分かれば
無下にはできない。

そういうところは優しい有。


「…そういえば、木村君、さっきこの子のこと、ひまって呼んでなかった?」


どきん

ようやく泣き止んだ及川さんは
潤んだ瞳でこっちを見ている。


「ひまって…誰?」