「……いつまでそこにいるんですか?」


何分経っただろう。
私は男の方を見ないで、問いかけた。



「んー、君待ちかな?」

「何か用ですか?」

「…好きな人に似てるんだよね。」



低いけど、すこし甘い声が
車の走行音と、都会の喧騒に溶けて行った。



台詞は新手のナンパみたいだったけれど、

店長(あいつ)のような
いやらしさや、ねちっこさは感じない。


「もう少しだけ…。」


私は目を閉じると黙って、車の流れに視線を戻した。