「ひまり?泣いてるの?」


少し酔っちゃったのかな。

溢れて出てくる感情を整理できずにいた。


有の作った笑顔を見てたら…


「なんで悲しいんすか…」

「…泣いてない。」


有はひまりの肩を引いて、顔を自分の方に向かせた。


「泣いてんじゃん。」

「有が…泣かないから。」

「ひまり…」

「何で、嘘つくの…?」

「…」


有は少し体を寄せるとコツンと額を合わせた。


「俺だって泣きたいよ…」


猫っ毛の髪が、くすぐったい…


やっぱり有と私は似てるんだ。


この人の思いがどうしても
分かってしまう。

切なくて苦しくて痛いほど…


地下に届く都会の夜のクラクションの音を遠くに聴きながら…

彼の悲しみに想いを馳せていた。