お弁当を食べ終わり、小会議室から出たとき、細身で長身の、感じのいい男性社員と出くわした。
お疲れ様です~とみんなが挨拶する中で、輝美がヒソッと教えてくれた。
「この人が派遣社員に連れ去られたイケメンの営業部の人」
連れ去られたって、今そこに居ますけどね……と汐音は思ったが、おそらく、輝美にとっては、もう居ても居ないのと同じことなのだろう。
汐音の頭の中で、鷹に首根っこ咥えられて、空高く連れ去られていっているそのイケメンさんが笑って話しかけてくる。
「あれ? 新人さん?」
「初めまして。
総務に派遣されてきました、狭間汐音と申します」
そう言い、深々と頭を下げると、
「初めまして。
ふもです」
と男は名乗った。
……ふも?
と汐音が見上げると、
「あ、はい、あげる」
と彼は名刺を渡してきた。
「ちょっとー、ふもさん。
また派遣社員をナンパですか~?」
と輝美が嫌味を言うと、いや~……と彼は微妙な苦笑いをする。
「いや、違うよ。
名前、漢字で見ないとわからないかと思って」



