「あっ、す、すみませんっ。
 今日はインスタントでっ。

 失敗したくないのでっ。
 すぐに持っていくので、座って食べててくださいっ」
とキッチン前のカウンターにおむすびを運ぼうとすると、求が受け取り、運んでくれた。

 こういうキッチンって話しながら料理できていいんだけど。

 今はまだ加倉井さんに見つめられると、緊張しちゃうな……と汐音はちょっと震える手で、インスタントの味噌汁の袋を裂いた。

 二人分の具と味噌を開け、味噌汁(わん)に湯を入れている途中で気がついた。

「あっ」
と声を上げてしまい、求がこちらを見る。

「あっ、いやっ、なんでもないですっ」
と汐音は笑って誤魔化そうとした。

 ……まずい。

 具具、味噌味噌になってしまった。

 ひとつの椀は澄んだお湯の中にたくさんの具が浮いていて、もうひとつの椀は味噌で真っ黒で、なにも具は浮いていない。