「申し訳ございませんでした」
汐音が社屋の外の自動販売機で買った珈琲を求に渡しながら頭を下げてくる。
「すまなかったね、求くん。
いや、加倉井さん、と此処では呼ばせてもらおうか。
俺は今、渡真利新一という人間なんで」
そう渡真利新一こと、里見繁は求に言った。
「まあ、有川とかいう、君の一族に仕えている男はなにもかも知ってそうだったけどね」
やっぱり、君は聞いてなかったみたいだね、と渡真利は言う。
……俺が汐音の口から聞きたいから、調べたことはなにも教えるなと言ったからだな。
求は有川にそう言ったことをちょっとだけ後悔していた。
汐音が警察を辞めてなくて、此処には潜入捜査員として来ていたことも。
同じく警察に居る、汐音の従兄の繁が渡真利新一と名前を変えて、共に潜入していたことも。
有川のことだ、あの日、総合公園に迎えにくる前に、調べ上げていたに違いない。



