汐音にちょっと触れただけで、飛んで帰ってしまった……。
求は車の中で項垂れていた。
あいつら、絶対、明日、エレベーター前とかで待ち構えてて、突っ込んで訊いてくるんだろうな……、
と恋愛アプリチームの女性陣を思い浮かべる。
「えーっ、社長っ。
せっかく、とっておきのお菓子譲ってあげたのに、なにやってんですかーっ」
とか怒鳴られそうだ。
いやいや。
でも、汐音に関する新しい情報は得たからな。
汐音は警察をやめても、黙々と日々練習するくらい柔道に打ち込んでいるらしい。
「……あ」
と求は声を上げた。
迂闊に汐音に手を出すと、ひどい目に遭うかもしれないと有川が言っていたのは、もしや、このことだったのかと気がついたのだ。
……まあ、如何に汐音が強かろうとも、合意の上だったら、投げ飛ばされることはないはずなのだが。
まあいい。
明日も汐音に会えるかもしれないし。
そうだ。
あのこと、汐音に言いそびれたな、と求は思い出す。



