その頃、社の車で出かけた求は、あの公園近くの交差点で止まっていた。
なんとなく公園の中に汐音の姿を探してしまう。
……美味かったな、あのおむすび。
久しぶりに食べた。
人の手で握ったふわふわのおむすび、という話を一緒に会社を立ち上げた専務の日坂武志に話したのだが。
武志は、
「人間が握ったのが食べたかったら、居酒屋かカラオケにでも行けよ。
俺もバイトでカラオケ勤めてたとき、握ってたぞー。
……ま、俺みたいなやつが握ったやつはあまり食べたくないが」
と言ってきた。
奴がどういう状態でどういう感じに握ってたのか、ものすごく気になるな……。
あのカラオケでドリンクしか頼まなくてよかった、と思いながら、公園横を通り過ぎる。
それからも公園の近くを通るたび、満面の笑みを浮かべておむすびに食らいつこうとしていた汐音を思い出していたが。
彼女と会うことはなかった。



