バウムクーヘンを前に固まっていた汐音は、ん? と思い、立ち上がる。
「どうかしたのか?」
と求がついてくる。
「いえ、外で妙な気配が……」
と言いながら、汐音がカーテンの隙間から外を見ようとすると、求が、
「何処だ?」
と言いながら、自分も見ようとした。
汐音の背に求の胸が微かに当たる。
次の瞬間、求が飛んでいなくなっていた。
アパートの外の気配より不審な求の動きに、汐音は、なんだ? と振り返る。
「す、すまない。
ご無礼だったなっ」
ご無礼……?
誰にだ?
と汐音が思ったとき、
「ゲ、ゲームもお菓子も渡したし、今日はもう失礼しようっ。
イカの打ち合わせはまた、今度っ」
と言って求は急いで珈琲のカップとバウムクーヘンの皿を下げると、脱いでいたコートを手に出ていってしまう。



