そんな平穏な時間が流れているアパートの外では、静かな闘いが起こっていた。
汐音のアパートの様子を窺っていた男二人が相まみえていたのだ。
お互いがお互いを見て思う。
……この隙のない目、ただものではない、と。
「こんばんは」
と片方が話しかけた。
「……こんばんは。
いい夜ですね」
と微笑みを湛え、もう片方の男が返した。
「……失礼ですが、お名前は?」
「……渡真利です。
あなたは?」
「有川と申します。
求様のおじいさまの家にお仕えさせていただいております。
こんなところで、なにしてらっしゃるんですか?
――渡真利新一さん」
と有川は笑い、名乗っていない、渡真利の下の名前まで呼んできた。



