仁坂はさも当たり前のようにそう言ってくれた。
胸がいっぱいになってまた泣きそうになる。

私も涙腺弱くなったなぁ。

仁坂は私のシャツをグイッと引っ張り傷を露わにして、その傷に唇を落とした。

「傷があろうがなかろうが偲は綺麗だよ」

えっ・・・え?今、き、キスした?仁坂が?私に?しかも綺麗って・・・。でもなんでキス?え?

自分でも首元まで赤くなるのが分かる。

私が混乱していたら仁坂に「動揺しすぎ」と笑われた。

いやこれで動揺しない方が凄くない!?

すっかりボタンのことを忘れた私に変わって仁坂が閉めてくれた。

・・・地味に胸に手が当たったけど、言わないでおこう。

「もう帰ろっか。俺らの家に」

私を立たせようと仁坂に手を引かれても、私は腰が抜けて立ち上がれない。
見かねた仁坂は私の身体をひょいっと持ち上げて、私はお姫様抱っこされた状態になる。

「仁坂ぁ!?」
「何?迎えはもう来てもらってるから」

仁坂が愛おしそうに微笑みながら私の頭を撫でるものだから、不覚にも好きだと自覚してしまった。

どうしようもなく、もう好き。

こんなの好きになるなって方が無理じゃん。

仁坂のばーか。

仁坂はこの後本当に車までこの状態で運んでくれた。

その日の夜は仁坂に助けられた一連の流れを思い出して、ドキドキしすぎてよく眠れなかった。