偲は震えている。

「な、何でその女がいいの!私達の方が!ずっと仁坂くんのこと見てきたのに!!」

女らのリーダー核はまだ諦めずに俺に訴えている。

まだいたのか。

「だから?まさかお前らなんか眼中に無いって言ったの忘れたの?」

偲を抱きしめる力を少し強めて、女らにそう吐き捨てると女らは逃げ去った。

すると偲はタガが外れたように泣き出した。
俺の背中に手を回しぎゅっとシャツを握る。

「仁坂ぁ!ごめん、頼られてるって思って・・・友達になれるかもって期待して、仁坂待つこと頭から抜けてたの!ごめん!全部・・・私が悪いの。全然ダメダメでごめんなさい」

偲はそうわんわん泣きながら俺に謝罪する。

「違う、偲は悪くないよ。ごめん、来るのが遅くなった。怖かったよね。ごめん偲。でもお願いだから・・・わがままだと思うけど、俺を嫌いにならないで・・・・・・」

最後の方は上手く声が出ず消え入りそうだった。

偲だけは嫌われたくない。

それだけは・・・──────。

「何でそんなこと聞くの・・・?嫌いになるわけないじゃん。私にとって、仁坂は誰よりも大切な人なんだよ」